【完】ラブ☆パワー全開
「ちょっと待って?」
仁に掴まれた腕を払おうとするあたしを、
強く掴んで離してくれない。
「な、何?」
笑わなきゃ。
そう思うのに、
嘘の笑顔すら出来なくなる。
「いつからおったん?」
何それ。
さっきの人のこと言ってる?
仁の焦った声に、
イライラしてしまう。
下を向いたまま顔をあげることが出来なくて。
駄目だ、このままじゃ気付かれてしまう。
そう思って頑張って顔をあげようと、
笑顔を向けようとするけど。
出来ないよ。
「えー……少し前かな。
仁、バイト中だったからメール見れないじゃない?
あたしなら全然気にしてないよ。って言おうと思ったんだ」
早口過ぎる。
そう気付いたのは話し終わってからで。
失敗した。そう思った。
気にしてない。
これは大嘘だけど、本当だよ。
気にしてない、
そう思えば本当になる、
はずだもん。