【完】ラブ☆パワー全開



「ちょっと待って?」



仁に掴まれた腕を払おうとするあたしを、
強く掴んで離してくれない。



「な、何?」



笑わなきゃ。

そう思うのに、
嘘の笑顔すら出来なくなる。



「いつからおったん?」



何それ。

さっきの人のこと言ってる?


仁の焦った声に、
イライラしてしまう。


下を向いたまま顔をあげることが出来なくて。


駄目だ、このままじゃ気付かれてしまう。


そう思って頑張って顔をあげようと、
笑顔を向けようとするけど。

出来ないよ。



「えー……少し前かな。
仁、バイト中だったからメール見れないじゃない?
あたしなら全然気にしてないよ。って言おうと思ったんだ」



早口過ぎる。

そう気付いたのは話し終わってからで。


失敗した。そう思った。


気にしてない。

これは大嘘だけど、本当だよ。


気にしてない、
そう思えば本当になる、



はずだもん。



< 81 / 370 >

この作品をシェア

pagetop