【完】ラブ☆パワー全開
「さっきの話聞いてたんやんな」
仁がボソッと呟いた。
「な、何の話?」
とぼけてみるものの、
焦りが声に出た。
「彼女とか違うで?」
「へ? 何が?」
「先輩が俺をおちょくってただけで……」
「だから何の話? あたし何も聞いてないよ?」
精一杯落ち着いた口調で、
精一杯の笑顔で笑いかけた。
ここは聞いていた、
って言った方が上手く話が進んだかな。
それで気にしてないよ、
の言葉の方が上手くいったかな。
そう言った後に思ったけど。
「綾さん!」
どうして?
笑ってるのに。
どうして、怒るの?
「綾さん、何か変やで?」
仁の方が変だよ。
ねぇ、さっきの人は誰なの?
そう聞いても焦らない?
「変じゃないよ」
声が震えたのが自分でもわかった。