【完】ラブ☆パワー全開
仁にそんな事がわかるはずもなく。
部屋の鍵を開けると、
「おい! 兄貴、美代(ミヨ)!」
大きな声を出しながらどんどん進み、
着いた先はリビング。
「何や、大きな声出して?」
ソファに座ってた人が振り返り、
驚いた顔をする。
「あ。こっ、こんにちは」
取り合えず、頭を下げたあたしに
「あ、こんにちは」
仁と同じイントネーションのその人は、
話し方で仁のお兄さんだと気がついた。
顔をあげたあたしに優しく微笑みかけてくれる、
お兄さんはどことなく仁に似ていた。
あたしから目線を仁にうつすと、
キョトンとした顔で
「……で、誰?」
ごもっともな質問です。
いきなり部屋に入って来て挨拶されれば、
あたしだって言いたくなる。
誰? って。
でも、どうして急に仁のお兄さんに会ってるんだろう?
仁を見上げると、
不貞腐れた顔をしている。