【完】ラブ☆パワー全開
「もうえぇやろ」
そう言いながら
あたしの手を引いてリビングのドアに手をかけた仁に
「待てーい!
綾乃ちゃんだよね?
さ、座って座って!」
「おい、美代!」
怒る仁を無視して、
あたしの手を引っ張る美代さん。
未だ全く状況の飲み込めないまま美代さんに引っ張られて、ソファへと座わらされた。
「仁の彼女、綺麗だねぇ♪」
「本間やでなぁ。こんなんのどこがいいんやろか」
美代さんと翔さんが、
あたしの顔を見ながらにこやかに会話する。
その横で仁は不貞腐れて座ってるだけ。
「最近な、仁の様子があまりにも変やから、絶対彼女出来たって思っててん。
バイト先に行ったら会えると思ったのに、会われへんし」
「おい、美代! あんまいらんこと言うな!」
急に前のめりになり怒り出した仁に、
美代さんの隣に居た翔さんが
「俺の彼女を苛めんな、ボケ」
と美代さんの肩に手を回した。
「え。美代さんと翔さんって付き合ってるんですか?」
「うん、そうやで?」
にこにこ笑う美代さんを見て。
肩の力が抜けたっていうか、何ていうか。
あたし、お兄さんの彼女にヤキモチ妬いてたわけ?
……馬鹿みたい。
仁も仁だよ!
初めから言ってくれればいいのに!
そう思って隣を見ると、
ニヤッと笑ってる。
あ……これって、あたしが勘違いしてたこと気づいてる?
やだ。
すっごく恥ずかしいんだけど。