ウェディング・ドリーム
出会い
「おーい、博史。足元のボール投げてくれ」
球出しをしながら良一は叫ぶ。
足元に転がってきたテニスボールを拾い良一に投げながら、
「そろそろ相手をしてくれないか?」
私は静かにテニスコートに入って行った。
今日は日曜日。私、雨宮博史が主宰している誰でも参加できるテニスサークルに、親友の良一も参加しているが、彼は女の子の相手ばかりしていたので痺れをきらしていた。
「それでは皆さんボールを拾って休憩にしてください」
まるでコーチ気取りの良一に、
「いったい誰のサークルなんだか?」
呆れたそぶりで言いながら、私と良一は位置についた。
私はふとしたきっかけで観たテニスのビデオで、ボルグ対マッケンローという歴史的なウインブルドンの試合を観てからテニスにはまり、高校時代からテニスを始め社会人になってからも、週五日というか毎日というか会社帰りにスクールに通ったり、テニスクラブに行ったりして過ごしているテニスフリークである。
週末は自分でテニスコートを予約して、テニスが本当に上手くなりたい人を集めて、サークルを主宰している。
親友の菊池良一は、幼い頃からテニスをしていてインターハイ、インカレを経てメーカーと契約し、名前は知られていないが一応プロである。
彼が契約しているスポンサーのテニスクラブに、私がテニスの相手を探しに行った時に、良一が声をかけてきてから親友としての付き合いが始まった。