ウェディング・ドリーム
二人がコートでラリーを始めると、周りにいる人達は大抵驚いて見入る。

自分で言うのもなんだが、まるでプロの試合を観ているような打ち合いだから無理もない。

一人がプロなのだから当然だが、私も負けず嫌いなのでそれなりに相手をしようと頑張って迫力が出るからである。

ガットを強く張っている私のラケットの打球音は金属的で、緩く張っている良一のラケットの打球音との違いから、音を聞いているだけでもプレースタイルがまったく別れる二人のラリーは観ていて面白いと思う。

十五分程真剣に打ち合ってから、なぜ十五分かというと観ている仲間に悪いのと、正直言って私がプロ相手に打ち合えるのはそれが限界だからである。

その後二人は待っているサークル仲間に、球出しをコートの予約時間一杯までして終了した。

テニス終了後は、いつもファミレスに行って食事をするのだが、ファミレスに行くまで誰の車で行くかで少々もめる。

全員が車で来ているわけではなく、電車で来た人が誰の車に乗るかどうでもいいのだが、良一が乗っている車がフェラーリ465で四人乗りだから誰もが乗りたがり、いつも席の奪い合いになってしまうのである。

私もBMWの七シリーズという良一の三千万円の車に対して一千万円と価格は落ちるが、一般の常識からすると結構高い車に乗っているのだが、やはり地味なセダンよりも派手なスポーツカーに女性は目が行ってしまう。

なぜ、私達みたいな若造がこんな高い車に乗れるかと言うと、二人とも結構な車好きで、良一は契約料と給料の大半をつぎ込んで、私は思いつきで開発したシステムが思った以上に売れて儲けたからで、決して裕福な家庭で親に買ってもらったものではなく、それなりに努力して買ったのである。

このシート争奪戦で、不思議な事に良一の車のシートには目もくれず、必ず一番手で私の車に乗ってくる女の子がいて、それが後藤優子である。

優子は一年程前からサークルに入っているOLで、可愛くておとなしい子である。

普通の若い男なら、なぜいつも乗ってくるのか考えるのだろうが、私はそのへんが非常にうとく優子の気持ちにはまったく気付いていなかった。
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