約束【短編】
拓哉sideⅡ
ガサガサ、茂みを掻き分ける
乱れた息を整えるのも忘れて
僕は桜井神社の横手にある
森の中を記憶を頼りに歩いていた
まだ幼かった実羽に手を引かれて
あちこち歩き回った、10年前
確かにこの辺りだったはずだけど
暗さに慣れた目で辺りを見渡すと、
同じような景色の中に微かに見えた
そして、今僕が立っている場所は
『あ、もうすぐそこですよ』
丁度実羽にそう言われたところだ
あの時、確かに実羽はあっちを
指さしていた