約束【短編】

独りでに笑顔になっていた私の声は
夜空の静寂に溶けて行った。

「----・・・・・・」

『何やってるの?』
『お月見です。』
『風邪ひいたらどうするの、ほら』
「羽織、・・持ってきて下さったん
 ですか?』
『偶然君の部屋を通りかかったから』
『偶然?』
『そう、偶然』
『ふふ・・・、有り難うございます。』


「・・・・・っ・・・」

又、遠い昔のことを思い出して胸が
痛んだ。

だから、思いだしたって戻れるわけじゃ
ないんだから

どうして人の脳って勝手に動くんだろう

・・・こんなの、今は辛いだけなのに

無意識の内に、少しだけ廊下を振り返る
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