約束【短編】
寝ぼけてはいるものの本能が
働いたのか、私はとっさに身を
引こうとしたけれど、頭を撫でて
いたはずの拓哉の手が、がっちりと
固定されてそれを阻止した
そしてそのまま、拓哉の唇が私の
瞼に触れた
私が想定していた個所ではなくて
安心したような残念の様な、
なんだか複雑な気持ちだ
でも、そんな気持ちも消し去るように
拓哉の唇は離れたと思ったら今度は
額に触れた
ちゅ、とやっと聞こえるくらいの
小さな、優しげな音と一緒に
彼の唇が私の顔中に落とされる