君の魔法がとける瞬間(とき)
「キミ、まだ高校生だろう?どうやって生活するんだ?生きる事は、そんなに甘くないんだ。
社会は同情なんかしてくれないぞ。お父さんを心配させていいのか?」
その言葉にピタッと体が止まる。
社会は同情してくれないし、生きる事は甘くない…。
安仁屋さんの言う事に間違いは何一つない。
でも、この家で暮らせ、なんて…。
素直に「はい」と言えない自分がいた。
「キミのお父さんの口癖、キミは覚えてるかい?」
「お父さんの口癖…」
「そう、口癖だ」
お父さんの口癖は…
――佑月、ビックな人間になりなさい。そしてお父さんを喜ばしてくれな――
――うん!佑月、有名な歌手になるね――
「佑月、お父さんを喜ばしてくれ…」
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