ゆびきり
それでも、詠士は、冷たい表情のままだった。








さすがの梨由も、笑顔を無くす。







沈黙が三人を包んだ。






そんな沈黙を破ったのは、梨由の初めて聞く、厳しい声だった。








「ねえ、詠士はいつまで私を許してくれないの?」








梨由の闇の部分を、初めてみた気がした。








黙り込んだままの詠士。







この場所に、私はいてはいけない気がした。








「はぁ〜」








詠士は大きいため息をして、梨由の車の後部座席のドアをあけた。








「詠士?」








不思議そうに私が詠士を見ていると、詠士は奥に座り、隣をポンポンと叩く。








「早く、お前も乗れよ」







「へっ?」








私は状況が飲み込めないまま、言われた通り、車に乗り込んだ。








< 106 / 309 >

この作品をシェア

pagetop