ゆびきり
「なんでって、好きだからでしょ?」








梨由はまっすぐ、詠士を見つめて答えた。








そんなまっすぐな瞳の梨由に、きっと、詠士は惹かれていたのだろう。







愛し方がまっすぐな梨由に…







そんな梨由の気持ちに、龍が答えることはなかった。







そう、麻子と出逢ったからだ。








倫子の友達として、リースの記念祭にやってきた麻子に、龍が一目惚れしたらしい。







あの写真に写っていた日に、二人の恋が始まったのだ。







麻子もまた、龍に一目惚れしていたのだから。







それを知った梨由は、麻子に嫌味ばかり言っていた。麻子がいるだけで、

「また来たの?」


と、冷たい態度しかできず、それをまた龍に怒られて、負の連鎖だった。









それでも、素直な梨由は龍をとられたくない一心で、麻子がリースにこないようにするためには、そうするしか思いつかなかった。







けれど、その言動が余計、龍の心を離してしまうことになる。








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