ゆびきり
家についた私と詠士は、どこか気まずく感じて、お互い話す言葉が見あたらなかった。








今日は、詠士の誕生日だったのに、楽しかった時間が何故か昔のことのように遠く感じた。








同じ日なのに…








「なんか、今日が誕生日なんて忘れちゃうくらい、変わったよね」








ぽつりと、本音をもらす私に、詠士は緊張した表情のまま言葉を探す。









「ああ…、でも、いつかは知らなくちゃいけないことだよな…あいつの隠し事…」








詠士はその事ばかり、考えているんだね。







当然だけど、また少しずつ、詠士の心が離れていく気がして悲しかった。








「そうね…」








気のきいた言葉は、やっぱり何も出てこないよ。








私は、どうしたらいい?








どうしたら、詠士を支えられるのかな?








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