ゆびきり
「今日はこんなのしかできないけど」






倫子はミートソースパスタを梨由に出すと、梨由は嬉しそうにそのパスタを見つめた。






「倫子の料理久しぶり、嬉しい。いただきます」






梨由は本当に嬉しそうに、美味しそうに食べる。






そんな元気な梨由をみて、なんだか私は安心した。





「それで、なんでここに来たわけ?」







詠士は相変わらず、梨由には冷たい態度で接する。






それが、詠士の梨由への想いを抑えるための手段だということも、最近感じていた。





本当は、親身になりたいくせに、中途半端な態度。私に対しても中途半端、でも、それが本音でしっかりとした答えが出せないことを伝えてくれる狡い人。





分かっているのに、どうして引くことができないんだろう。





きっと、人に話したらそんな曖昧な男は願い下げだとかいう人の方が多い。





でも、惚れたらそんな簡単に引く方法があるなら、教えてほしいくらいだ。





これだけ好きになってしまった心を、一瞬で冷めさせる方法を。





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