ゆびきり
でも、今日は違う。





「これは、あなたと梨由の関係で俺が口出すことではないよ。でも、あまりにも逃げている兄さんは情けなく思う」






その言葉に血が上った政康は、光哉の胸ぐらを掴みにかかった。





「やめて」






梨由とミサは必死に光哉を庇った。





「副社長、今度のライブでの新曲、じっくり聴いてみてください。そしたら、梨由がもう無理なことも、手放す時期がやってきたこと、わかるはずです」





ミサも、いつもに増して真剣に政康に向き合った。






そんな三人をみて、政康は一人孤独を感じ、その場から立ち去った。






政康が立ち去ると、光哉は力が抜けたように、机に身体を預ける。






「びびったぁ、殴られるかと思ったよ」






「本当だよ、ヒヤヒヤしたじゃん。でも、ありがとう」





梨由の言葉に、飄々とした表情で光哉は頷いた。





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