ゆびきり
頭の上に、詠士の手の感触、温もりを感じる。安心するのに、手離したくない欲望で、自分が自分の首をしめるように苦しくなる。






「嫌だよ。愛してくれなくて良い。梨由を好きなままでいいから、このまま側にいてよ」






私はそのまま、詠士に身体を預けるようにもたれた。





私があげた香水の香りが、苦しいほど私の想いを膨らませ、破裂させてしまいそうだ。






「日和…」







詠士は、こんな私に、かける言葉が見つからず、ただ、頭を撫でてくれた。







何も言えなくても、充分伝わる優しさに、私の心も次第に落ち着いていった。






ライブに行くのやめよう…






なんて、思っていても言えないよ。





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