ゆびきり
次の日、私はいつものように水族館の受付をしていた。







笑顔でいるが、基本お客さんの顔は見ていない。







そう、だから、始めは気づかなかった。






「こんにちは」






受付をしていると、突然、男の人があいさつしてきた。






聞き覚えのある声






私が顔をあげると、昨日の人懐っこい笑顔がそこにあった。






「詠士!?」







ついつい、大きな声でいってしまった。マイクをつけているため、外にまで丸聞こえだ。







「はは、やっぱり日和って面白いな」







「名前、覚えてくれてたんだ」







私は、嬉しくなった。
どちらかというと、地味な感じの私は、初めて会う人に名前は覚えられにくい。






あの数分しか、話していないのに、詠士にちゃんと印象残れているんだね。







「しりもちついてくれたもん、そりゃ覚えてるよ」







詠士は悪戯っぽく言った。







< 28 / 309 >

この作品をシェア

pagetop