ゆびきり
私は覚悟を決めて、本当は泣きたいのを隠しながら、笑顔を精一杯作って、詠士と向き合った。







詠士はびっくりした表情で、私を見つめ返している。






「詠士、恋人ごっこはもうおしまいにしよう」






私の言葉で、空気が張り詰めたのがわかる。
でも、もう決めたんだ。






十代最後の大恋愛のピリオドは






自分でつけるって…







「なかなか最近帰ってこないのに、半額家賃もらってるのも気がひけるって…。
それに、もう、詠士の心は決まってるでしょ?」






私の問いに、詠士はバツが悪そうに俯いた。






分かってたよ。





ずぅーっと前から分かっていたんだ。






詠士の中に、私が入るすきなんてないくらい、いつだって、梨由でいっぱいな事。






それでも、一緒に住んでいる情から、私の気持ちを傷つけないようにしてくれていた事。






「分かってたんだよ。詠士の中にある私への気持ちは、ただの情なの。詠士は優しいから、一緒にいる私を傷つけないようにしてくれた。その事も分かってる」






声が震える。





でも、今は涙を流したくない。




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