ゆびきり
「日和!」





みんなの声も、振り払うように私は走って出ていった。





それを詠士が追いかけようとした時、真斗が立ち上がり止めた。





「お前はやめとけ」





そういって、真斗が走って跡を追った。






私は近くの橋の手すりにつかまり、我慢していた涙を大量に流した。





私の中にこんなに涙があるなんて、とめどなく流れる涙に動揺する。





これでいいんだ。





初めから、二人の間なんてなかったんだから。





引くのは私しかいなかったんだ。





二人とも優しいから、私が引かなければ幸せになれない。






私だって、いつまででも、好きになってくれない人を縛りつけていても、幸せなんかなれるわけないんだから。





手すりに寄りかかるように泣いていると、温かい手が私の頭に触れた。





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