ゆびきり
『亡くなったのよ』






その言葉が、私から言葉を奪う。
人の死を私はまだ、身近で起こったことがないわたしには、未知の感覚だろう。







そういえば、本当に好きな人は死んでしまったと、三年前に梨由が話していた。
そんなことに、今更気づき実感する。









『好きな人と同じ苗字になれる、それだけでいい』







そう言った梨由の言葉







好きな人が女性と死んでしまった…






そんな孤独を抱えて梨由は、好きじゃない人と結婚したの?






私は、無償に梨由に会いに行きたくなった。







「もう、四年も経つのか…早いな。もうすぐ、命日だから帰ってきたのかな」







真斗はそう呟く。






梨由だけじゃない。
真斗や倫子、そして詠士も同じ仲間を失ってしまったんだ。







私にはそういう経験がない。だから、気持ちを分かることは出来ないけれど、心が痛む。







「梨由…この人を好きだったんだよね。望月龍さん」







フルネームで名前を読んでみる。







幸せを諦めた梨由の、唯一の救いが、この名字だから







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