ゆびきり
「聞いたの?名字のこと」






倫子の問いに、うなずいて見せた。






「三年前にね、好きな人と唯一、同じ名字になれたことが幸せだって、梨由が言ってた」







そう呟いた私の話を、いつから聞いていたかはわからないが、詠士が話しに入ってきた。








「そんな、浅はかなことで幸せを感じるあいつはバカだ」







遠くから聞こえる詠士の声に振り向くと、入口付近で、不機嫌そうに腕を組んで立っていた。







詠士は、梨由に対して厳しい。






「詠士、お前いつからいたんだよ」






真斗も目を丸くして言った。






詠士は中へ歩いてきて、私の隣へ座る。







「ついさっき、日和の言葉しか聞こえなかったけど」







まずいこと言っちゃったかな。






過去の話を詠士のいないところでするなんて、きっと、詠士もいい気はしないよね。







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