甘くない苺
前の女の人は反対のホームらしく、特に急いだ様子はなかった。




しびれをきらし、行動に出る。


「あのっ、…ってあーッ!!」



声を掛けた瞬間ブザー音と共に電車は動き出した。


呆然と立ち尽くし、消えてく電車を見つめる。



「あっ、すいません!!もしかして今の電車に乗るんでしたか…?本当にすいません!!」



何度も何度も申し訳なそうに頭をさげてくる彼女に、怒る気にはなれなかった。


「いや、いいですよ。」



心配させないように笑顔で返し、茉奈にまたメールをしようと携帯を開いた。



「あの、どちらまで行かれるんですか?」



突然女の人は聞いてきた。


なぜそんなことを聞くのか疑問に思いながらも答えると、



「あぁ!近いじゃないですか!お詫びと言ってはなんですが、うちの旦那に送らせますよ」




驚き呆然として、返事ができずにいる間に、彼女は誰かに電話していた。
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