ねえ、好き
夏のよる
昼間に力一杯ないてた蝉は、
夜にはちゃんと静かになった。
街中の蝉みたいに、夜にも間違えてなくなんてことはない。
太陽が高かった頃の熱気が少し残る、しっとりとした空気が私達をつつむ。
「…あ、おちた」
最後の線香花火が疲れたように核を地面に落とした。
「はやいな。せっかくラス1譲ってやったのに」
「うるさいな。帰ろ」
そういって、燃えカスが入ったバケツを持ってたちあがった。
「持つ」
「あ、ありがと」
ふたりで手を繋いであるく、
よるのみち。
「…静かだね」
「ああ、静かだ」
「明かりが、少ない」
「こわい?」
「…まあまあ」
ふっと、軽く息をはくように笑った。
「…ねえ」
「ん?」
「なんで、ここにしたの?」