ねえ、好き
ある朝、いきなり。
「軽く旅行、いくか」
あなたはそういって、私を連れ出した。
大きめのカバンに荷物をつめて、新幹線に乗って、ついたここ。
なんだか静かで、ちらほら昔ながらのお店があったりするけど、観光名所ってほどの雰囲気もない。
実際に来るまで、名前もあまり知らなかった場所だった。
「…んー、なんも、ないから」
「え?」
「静かじゃん、ここ」
「うん、静か」
「なんも考えずに、ぼーっと景色眺めてられる町だし」
「うん」
「くたびれたときにはもってこいだよ」