エリートな彼は溺愛を隠さない
もう分かった。
…分かったから…。

「夏哉?…震えてる」

ふと俺の腕の中の綾芽が言う。

そっと身体を離し彼女の瞳を見る。

ゆらゆら揺れる綺麗な大好きな目。

「嫌だ…、俺を嫌いにならないで」

「な、…何言ってるの」

その目にサッと動揺の色が混じる。

「俺、綾芽が好きだ。
本当に本気で好きになった。
今になって、俺から離れる事がお前の目的だったのか?」

「え」

しばらく俺の目をジッと見ていた彼女がやがて、ふっと笑顔になった。

「綾芽…?」

「私も、夏哉に初めてキスされた時、同じ事を思ったわ」

え…?


―――『私を傷つけるのが目的なら、もう十分です……』


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