エリートな彼は溺愛を隠さない
分っかんねぇ…。

女ってこんなに複雑だったか?

甘い言葉と、身体の触れ合いさえあれば、喜ぶもんなんじゃないのか?

少なくとも今まで一緒に過ごしてきた女達はみんなそうだった。

………。

「綾芽?」

俺が涙の止まらない彼女に、屈んで目線を合わせると、彼女は突然、俺の首に腕を巻き付けてしがみついてきた。

「!!お、おい」

「………」

なっ、何なんだ…?一体。
分からなさすぎる。

彼女は何も答えない。

だけど、抱き締める腕の力は細い割には強くて、俺の鼻を彼女の髪の柔らかな香りがくすぐってくる。

かっ…、か、可愛すぎだろ、これは…。

百戦錬磨の俺も流石に固まってしまった。

情けない事に、本当に…どうしたらいいか、分からない…。

こんなのは初めてだ。




< 45 / 164 >

この作品をシェア

pagetop