エリートな彼は溺愛を隠さない
子供の頃から常にトップに近い成績だった俺は、何もかもが俺の思い通りに進んでいく事に高校生の頃から気付き始めていた。

「夏哉くんはいいわね、賢くて、お顔も綺麗で。要領もいいから何でも出来ちゃうものね」

玄関先で近所の人が母に言った言葉を今も覚えている。
そう、当たり前だろ。お宅のヤンキー息子と俺とじゃレベルが違うんだよ。
部屋の中で会話をたまたま耳にした俺は…その時、そう思った。

その頃から俺の中で、何かが少しずつ、動き始めたような気がする。
今までの優等生の仮面を外し、俺は変わり始めた。

ルックスも自分で言うのも何だがなかなかの美形だ。

当然俺に寄って来る女は後を絶たなかった。

実家は父が小さな会社の社長でまずまずの小遣いを寄越してくれた。

適当に遊んで自分を変えるのは案外簡単だった。
一生懸命、今まで勉強して、努力して、常に他人より上を目指してきたのは何故だろう。

…ある日、フッと力を抜くと、とても…楽だった。



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