姫×四季(仮)
なッ、何!?
「そう言わず寝てろよ。大丈夫。誰も病人相手に手は出さないからさ」
じゃあなぜ近寄る!?
もうあと数歩で
少し腕を伸ばすだけで届きそうな距離。
おいおい…勘弁してよね。
2回も助けてもらっといてなんだけど、だからと言って信用出来る訳じゃないからね。
だから。
こういう場合
逃げるが勝ちッ
階段を背に
後ろを向いたままゆっくりと
階段の1段目に右足を付けた瞬間…
またも目眩に襲われ
大きく視界が揺らいだ。
「えッ…」
ウソ…
もしかして落ちる…?
「バッッ」
最後に理解出来たのは
目の前にいた矢神に
腕を引っ張られた感覚だけ…。
***
痛みはない。
恐る恐る目を開けると
すぐ目の前には
矢神の胸元。
「なッ!」
「動くな。マジで落ちるぞ」
どうやら
落ちる瞬間に引っ張られ
そのまま矢神に抱きつく形になってしまったみたい。
少しでもヘタに動けば
2人で真っ逆さまらしい。