私と彼の秘密の契約
久しぶりに先輩を見つけた幸せ感に浸る。


なんかここ数日、色々あって疲れたけど、先輩に会えたから元気が出てきたよ。



名残惜しいけど、先輩から目を離し、いつもの本棚へと向かう。



「よぉ。」


本棚の影には塗師君が居た。


あー、なんかまた疲れが……。


「あー、塗師君もこの辺のシリーズ好きなの?」


昨日も確かこの辺の本棚の本読んでたなぁって思い出す。


「あぁ、割と好きだぜ。お前、本読みに来てるかと思ったら、あいつ見に来てんの?」


塗師君が親指を祐先輩の方に向ける。

見られてた!?

「っ!だったら何よ!!」

「なぁ、俺の方がいい男じゃねぇ?」


はぁ?
なにこのナルシストっぷりは。
いちいち顔近づけるのも止めてほしいし。


「どこがよ!」


先輩よりいい男なんている筈がないんだから!



私は乱暴に読みかけの本を本棚から引き出すと読書スペースへと移動する。


どんっ



誰かにぶつかってしまった。
その拍子に持っていた本を落としてしまう。


「っあ、ごめんなさい!」


塗師君の発言にイライラしすぎててちゃんと前見てなかった!
やばいよー。


慌てて頭を下げる。



目の前に落ちてた本が誰かの手によって拾われる。


「はい、本、落ちたよ。……橘さん?」


ばっと顔を上げる。

聞いたことのある声。


「あっ、ありがとうございますっっ!」


本を拾ってくれたのは、なんと祐先輩だった。
心臓がドクドクと痛いくらいに音をあげている。

「ふふっ。君は良く落とし物をするね。」


先輩は私の大好きな笑顔で笑う。
まさか、覚えててくれたの。
名前まで知っててくれてるなんて!


顔が赤くなるのが分かって、恥ずかしさの余り下を向いてしまう。


「す、すいません!」


先輩はまたくすっと笑う。


「そんなに謝らないで。橘さん。」
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