私と彼の秘密の契約
「止めて!」


塗師君の姿を見つけるやいなや、私は塗師君の手にしがみついていた。


「た……橘さん?」


塗師君は目を大きく開いて、驚いた顔して私を見てる。

「せっ、先輩に何したのっ!?」


いつの間にか私は泣いていたみたいで、声が上手く出てこない。



「橘さん?何を言っているの?」

塗師君は優しく私を宥めるようにそう言う。
でも、騙されない。

「あなた!人間じゃないでしょ!私、見ちゃったんだから!手から黒いの吸い込んで、目が赤くて、ぼんやり光ってたんだから!」

塗師君はしがみついたままの私の手を優しく離す。



「……落ち着いて。何かの見間違いじゃない?」

「誤魔化さないで!先輩に何したの!?」


「先輩?……あぁ。」


ちらりと校庭を見て、それから私を見る。

背の高い彼の視線は冷たく私を見下ろしてる。



怖い。

だけど、先輩を守らなきゃ。


「あの男に惚れてんの?」


塗師君の目が赤く光る。

さっきは遠くて見えなかったけど、爪や歯も伸びて来て、彼の周りを黒いオーラが渦巻く。


「な、何なのよ!!」

塗師君の口元がにやりと歪む。


「これが見える人間なんて居るんだな。」



「いやっ、触らないで!!」


彼の手が私の腕を掴む。


「あいつを助けたいんだろう?ここは目立つ。こっちに来い。」
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