わんことにゃんこの愛し方



「…理桜?どうしたの?」

席を立って、アイツの背中に標準を合わせる。


よし、行ける。


「ねぇ…」

「犬飼くーん!見てみて、このチョコ新作出たの!いちごキャラメル味!!」

声をかけようとしたら、ちょっとだけでた声に被さるように聞こえた、高くてきゃぴきゃぴした声。

ぴょこん。


「……え?」


耳が立った。


「犬飼くん甘いもの好きって言ってたよね〜?だからお裾分け!!」

ひょこん、ぱたぱた。


しっぽが、左右に揺れる。


「え、いーの?ほんと?うわっこれコンビニ限定品じゃん!すげっ!ありがとー!」


お菓子をくれた女の子に、お返しになるくらいの、甘い笑顔。

人懐っこそうに耳はぴょこっと立って、
しっぽはぶんぶん、嬉しそうに揺れる。



ぎりっと歯を食い縛った。


こめかみに青筋が浮かんだのが分かる。


…クソヤロー。


私はそのままガタンと騒がしく椅子に座り直した。

ふんっと鼻をならして、机に頬杖、ノートには黒いぐりぐりの殴り書き。


「理桜…なんかほんと変だよ?」


穂香に訝しげに言われても、もはや言葉を返す気にもなれない。


餌付けされやがって。

私とのケンカは、しょせんチョコで元気になれるレベルなのか。


もう絶対に心配なんてしてやるもんか!

こんのバカわんこめがっ!!



< 60 / 295 >

この作品をシェア

pagetop