Strawberry[更新停止中]

「―――侑?」

肩に手を置かれてはっとした。
いつのまにか電話は終わったみたいで、先輩は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「ごめんなさい、大丈夫」

さっきまでの思考を振り払うように、にっこりと笑って言う。

「ごめんな、電話長引いて」

「ううん」

何の電話だったの?なんてやっぱり聞けるわけもなく、さっきまでの空気を取り戻そうと焦る自分がいた。

「先輩、はい、ノート」

「やっぱ、かなり進んでんな」

先輩は受け取ったノートをパラパラとめくりながらため息をついた。

「もう、コピーしちゃう?かなりの量だし」

「ん、そうすっかな」

部屋の奥に歩いていく後姿を見ながら、ふと思い出す。

加奈たちに連絡してないっ!

慌てて携帯を見ると、マナーモードにしっぱなしだった携帯には大量の着信履歴とメール。

人のおうちで電話をかけちゃだめだよね‥
そう考えてとりあえずメールでひたすら謝った。
驚くべきスピードで返信が来たことから、かなり心配をかけてしまったとわかる。
明日またあやまらなくちゃ、と急いでメールを打っている間に、先輩が戻ってきたらしい。

「メール?」

「うん、ちょっとごめんなさい」

「‥‥‥あの、千真とかいうやつ?」

え?

打つのをやめて顔を上げると、眉間にしわを寄せた彼の顔があった。

近いっ‥‥

彼のきれいな顔が思ったよりずっと近くにあって、思わず退く。
顔が熱くなるのが自分でもわかる。


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