Strawberry[更新停止中]

「‥っ、違う、よ?」

「‥‥じゃあ、誰?」

「加奈」

どくどくと心臓の音が耳に響いて、彼に聞こえないか気が気ではなかった。

「ああ」

あの子ね。


ほっとしたような顔をして呟く。

「どうして?」

いきなり千真が出てきたのだろう。


「‥‥‥‥‥‥‥‥別に、」

そう言って、彼はすっと立ち上がりキッチンへ向かう。

きれいな顔が離れたことにほっとしつつも、私の頭にますます増えるクエスチョンマーク。
加奈ならいいの?



「侑、ごほうび」

首をかしげて唸っていた私の前に置かれたのはアイスクリーム。
ピンク色に赤い果肉がところどころ見えるから、おそらく、というかやっぱりいちご味だろう。

「かわいい」


細かい細工のガラスの器にきれいに盛られたアイスは、見ているだけで嬉しくなる。

そんな嬉しそうな私に、ふっとやさしく微笑んで頭を撫でてくれる。

「ありがとう」

先輩は、私の好きなものがどうしてこんなにわかるのかな。

彼のくれる笑顔も、撫でてくれる大きくてあたたかい手も、いちご味の甘いお菓子も。

彼のくれるものはいつだって、なんだかくすぐったくて、照れくさくて。
でも、嬉しくてたまらなくさせてくれる。

< 30 / 61 >

この作品をシェア

pagetop