Strawberry[更新停止中]
「‥っ、違う、よ?」
「‥‥じゃあ、誰?」
「加奈」
どくどくと心臓の音が耳に響いて、彼に聞こえないか気が気ではなかった。
「ああ」
あの子ね。
ほっとしたような顔をして呟く。
「どうして?」
いきなり千真が出てきたのだろう。
「‥‥‥‥‥‥‥‥別に、」
そう言って、彼はすっと立ち上がりキッチンへ向かう。
きれいな顔が離れたことにほっとしつつも、私の頭にますます増えるクエスチョンマーク。
加奈ならいいの?
「侑、ごほうび」
首をかしげて唸っていた私の前に置かれたのはアイスクリーム。
ピンク色に赤い果肉がところどころ見えるから、おそらく、というかやっぱりいちご味だろう。
「かわいい」
細かい細工のガラスの器にきれいに盛られたアイスは、見ているだけで嬉しくなる。
そんな嬉しそうな私に、ふっとやさしく微笑んで頭を撫でてくれる。
「ありがとう」
先輩は、私の好きなものがどうしてこんなにわかるのかな。
彼のくれる笑顔も、撫でてくれる大きくてあたたかい手も、いちご味の甘いお菓子も。
彼のくれるものはいつだって、なんだかくすぐったくて、照れくさくて。
でも、嬉しくてたまらなくさせてくれる。