Strawberry[更新停止中]
「いただきます」
手を合わせてアイスを食べようと添えられていたスプーンを取ると、オルゴールの着信音が聞こえた。
このメロディは、メールでなく着信だ。
「電話か?」
「うん‥」
人のおうちで電話出れないし、どうしよう‥‥
「出れば?」
「‥うん」
先輩がそう言ってくれたので言葉に甘えることにして携帯を見る。
着信の相手を確かめて、息を呑んだ。
着信:直人
なおと――――――
頭からすっと血の気が下がっていく気がした。
冷房が効いているはずなのに、冷たい汗が額から流れ落ちる。
どうしてこの人が、と考えているより深いところで冷静な自分の声が聞こえる。
当たり前でしょう?
約束、だもの。
自分の立場を忘れて笑っているから。
このあたたかい場所を手放したくないだなんて思ったりするから。
だから。
こんなタイミングで、昔を思い出すんだ―――――
「‥‥侑?」
携帯を見つめたまま止まってしまった私を心配そうに見ている。電話はまだなり続けている。
なんでもない、の意味を込めて先輩に小さく微笑んで、通話ボタンを押した。