砂漠に堕ちた天使 番外編
「そんなことを言わずに見せてくれ」



髪をゆっくり撫でられ、莉世は仕方なく身体をラシッドから離した。



ラシッドは莉世の顔を余すところなく見つめ、頭に巻かれている布を丁寧に外す。



亜麻色の髪にこびりついた錆色。



慎重に髪を分け、傷を見る。



血は止まっているが、このままでは中で化膿していくだろう。



「痛かっただろう」



莉世は首を横に振る。



「あの時は護衛から逃げようと必死だったから……殴られて意識を失って、そうしたらアクバールの馬の上にいたの」



ラシッドはもう一度、慎重に布を巻く。



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