砂漠に堕ちた天使 番外編
「私の姫の心はどこかへ飛んでいるようだな」
背後のラシッドの声で物思いから我に返る。
ゆっくりと振り返る莉世の顔に笑みが浮かんでいる。
「お兄様」
「何か気がかりなことでもあるのか?」
尋ねる声は優しい。
莉世は軽く首を横に振る。
梳かれたままの光り輝く髪がふわっと宙を舞う。
「ただ……寂しくなったの」
「私がいるのにか?」
ラシッドは片方の眉を上げて尋ねる。
「そう言うのではありません お兄様の代わりは誰も出来ないけれど、ファラウラ達は命の恩人で、不安な時に励ましてくれたからとても大切な人達で……」
莉世はラシッドの胸に引き寄せられた。
「わかっている お前にかけがえのない友人が出来て嬉しい 必ず来年ここを訪れてくれるだろう」
ゆっくりと長い指で髪を梳かれ、片方の腕で抱きしめられる。