月の欠片
結局、愛美を説得する事は出来なかった。
私はやりきれない気持ちでいっぱいだった。
気付けば愛美の家に着いてから二時間が経っていた。
(洸太…まだ待っててくれてるかな…)
そう思ったけど、すぐに電話する気にはなれなかった。
ぼんやりと空を見上げた。
星はほとんど見えなかった。
月だけが雲にかかって力なく光っていた。
そのまま歩き続けた。
しばらく歩いて圭輔くんの店の前まで来ていた。
少し躊躇ったけど、深呼吸してからドアを開けた。
『梨花!』
ドアを開けると、洸太がすぐに私に気付いた。
『愛美ちゃん、大丈夫だった?』
洸太が聞いた。
圭輔くんは不安そうな表情を浮かべた。