月の欠片
いつもより早くキャバクラへ向かった。
じっとしていられなかった。
いつもならタクシーを呼ぶのに、
早く家を出すぎたから歩いて向かった。
途中、愛美に何度も電話しようと思ったけど
怖くて出来なかった。
店に入るとボーイ達が驚いた顔で私を見た。
いつも遅刻ギリギリな私が30分前に来たんだから
当たり前かも知れないけど…
『梨花さん、今日早いっすね…どうしたんですか?』
『ううん、ちょっと…今日、愛美から欠勤出てない?』
珍しくボーイが話し掛けてくれたから、
愛美が休まないか聞いてみた。
『愛美ちゃんっすか?…欠勤は出てないですよ?何かあったんすか?』
『…ううん、何にも』
(出てくるんだ…良かった)
ホッとした瞬間、別のボーイが口を挟んだ。