月の欠片
『いらっしゃいませ〜』
開店時間が過ぎて、愛美が店にやって来た。
愛美がロッカーへ入った隙に真田さんの席へ向かった。
『初めまして、梨花と申します。』
そう言って名刺を渡すと、私をじっと見て
『貴方が梨花さん?愛美から話は聞きました、すごく親しくさせてもらってるって…ありがとうございます。』
そう言って自分の名刺を私にくれた。
【真田 行人(サナダユキヒト)】
とても物静かな雰囲気の人だったけれど、
瞳の奥に優しさはなく、どこか冷たい感じのする人だった。
『愛美に話は伺ってます』
私がそう言うと真田さんは驚いていた。
『そう…愛美は自分の事を他人に話したがらないのに、君は信用されているんだね』
(他人…嫌な言い方する人だなぁ)
『私も不思議です、愛美さんは私をとても慕ってくれているので…』
私は真田さんに少し闘争心を抱いていた。
この人が愛美から圭輔くんっていう幸せを奪ったと思うと、
憎たらしく思えた。