月の欠片

『梨花ちゃん、急にこっち来て大丈夫だったの?何かあった?』


彼氏が急にそう聞いてきた。


『ううん、会いたくなっただけだよ』


私は嘘をついた。


でも、疲れて会いたくなったのは本当だった。


知らない街にいると、普段の嫌な事を忘れられる。


何も考えなくて済む。



彼氏に、最近こんな事があったとか、

仕事の話とか、付き合ってから一度もした事がなかった。


する必要がなかったのかも知れない。


普段の私を知っても何もいい事なんてなかった。



彼氏といる間は、携帯の電源も切っていた。



(帰りたくない…もうこのまま、ここで暮らしたい)


私はふとそう思った。



そのまま2日間が過ぎた。

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