月の欠片

平日の昼間ということもあって、


新幹線の中は空いていた。


自分の席を探して座った。


(この時間なら、出勤間に合うな…)



時計の針は出発時間の1分前を指していた。



─プルルルルル─


発車のベルが鳴る。





鳴り響くベルの音が、


私にはまるで夢から覚める目覚まし時計のように聞こえた。



一瞬にして現実に戻った。


切っていた携帯の電源を入れる。


電源を入れると同時に何十通というメールが入って来る。



お客さんからとメルマガがほとんどだった。


不在着信通知はお客さんからと店長からたくさん入っていた。


(店長?なんだろ…?)


普段、休んだ時に店長から電話がある事はなかった。


…何だか嫌な予感がした。



愛美からのメールも着信もなかった事が、


嫌な予感を増殖させた。


< 132 / 161 >

この作品をシェア

pagetop