月の欠片
平日の昼間ということもあって、
新幹線の中は空いていた。
自分の席を探して座った。
(この時間なら、出勤間に合うな…)
時計の針は出発時間の1分前を指していた。
─プルルルルル─
発車のベルが鳴る。
鳴り響くベルの音が、
私にはまるで夢から覚める目覚まし時計のように聞こえた。
一瞬にして現実に戻った。
切っていた携帯の電源を入れる。
電源を入れると同時に何十通というメールが入って来る。
お客さんからとメルマガがほとんどだった。
不在着信通知はお客さんからと店長からたくさん入っていた。
(店長?なんだろ…?)
普段、休んだ時に店長から電話がある事はなかった。
…何だか嫌な予感がした。
愛美からのメールも着信もなかった事が、
嫌な予感を増殖させた。