月の欠片
出会い
『今日、俺飲んでないから車で行くぞ。』
そう言われて、哲也の車に乗り込む。
(どこ行くんだろ〜?ツレって誰だろ?)
車内は懐かしい音楽がラジオから流れていて、
どこに行くのかも、誰に会うのかも聞かずに
懐かしい歌に耳を傾けてしまっていた。
そうしてるうちに、車は郊外の1軒明かりがついてる雑居ビルの前で停まった。
(なんだ飲み屋じゃん、ラッキー!)
今日はもう飲めないと諦めていた私は、
嬉しくなってまたテンションが上がった。
エレベーターではなく階段で上がると、
【Open】と看板の掛けられたドアがあった。
哲也が慣れた手付きでドアを開ける。
─いらっしゃいませ─
そこには一人の男の人がカウンターの向こうで立っていた。
(誰だったかな?)
なんだか見覚えのある顔立ちだけど、
誰だか思い出せずにいた。