月の欠片
『えっ?もしかして梨花さん知らないんですか…?』
(店長が言ってた話か…)
『愛美がどうかした?』
『どうって…愛美ちゃんが梨花さんのお客さん取ったとか、お客さんと寝て指名取ってるとか…』
『ねぇ、それ誰から聞いたの?』
私が苛ついた声で尋ねると、女の子は黙ってしまった。
その時だった。
ロッカーのドアの向こうに愛美の姿があった。
『…愛美!!』
『おはようございます』
愛美は小さい声でそう言った。
女の子は気まずそうにロッカーから出ていった。
『……愛美、あのさ…』
『なんか、色々迷惑かけてるみたいでスイマセン…』
愛美は私の方を見ないままそう言った。
『今日、真田さんは?』
『…えっ?』
私の質問に驚いたのか、やっと私の目を見た。
『今日は仕事、忙しいみたいで…しばらく来ないみたいです』