月の欠片
『…もしもし?』
『おぉ、梨花?俺だよ、俺。わかるか?』
私は声に記憶を辿りながら、
『…あ〜!テツ!!久しぶりぃ!どうしたの〜?』
『おぉ、さすが梨花。よくわかったな。』
聞き覚えのある声に、間違ってなくてホッとする。
『あはは、テツの声くらいわかるよ。』
『そっか。今、俺地元帰って来てるんだ。お前が近くで働いてるって先輩から聞いたから…』
『マジ?私ずっと変わらずキャバクラで働いてるよぉ。まだ仕事中だし。』
─電話の相手は、中学生の時に付き合ってた哲也だった。
しばらく地元を離れて、
都会で仕事してたみたいだけど
連絡先も変わったままで、
ずっと音信不通になってた。
『あぁ、俺も今仕事終わったとこ。近くで先輩と飯食うことになって電話したんだけど…』
『近くってうちの店の?』
『そぅ、だからお前も仕事終わったら顔出せよ。』
『マジ?じゃあ暇だし、早くあがって行くよ。』
そう言って電話を切った。
(しまった!店まだお客さんいるんだった〜。帰れないかな?)