月の欠片


つい顔が綻ぶ。

(何ニヤついてるんだろ?)

『あぁ、うん…でも、もう帰ろうかなぁて思ってるんだけど…』


そう言った私を無視して、

『俺にもビールちょーだい!』


って私にビールを注がせる。


(聞いてんのかな…コイツ…)




『やっぱ幹事って大変だわ。全然ゆっくり飲めねぇや!』


って言いながらビールを一気に飲み干してる。



『─宮川く〜ん─』


遠くで宮川洸太を呼んでる女の子の声がする。



(せっかく近くに来たのにまた行っちゃうんだ…)



急にまた帰りたくなる。




『はぁーい、今行くよ〜!』


そう言って席を立ちながら、

耳元で、


『この後すぐ二次会だからさ、必ず来てね。』



って小さな声で囁いた。




私が返事をする前に、呼んでいた女の子の方へと向かって行った。




(どうしよう?帰ったらダメなのかな…)




真希に話し掛ける。

『この後、二次会だって。真希どうする?』


(真希が帰るって言ったら帰ろっと。)



すると真希は当たり前のように、


『行くよ!梨花も行くでしょ?』



と笑った。




『うん、行くよ!』




(結局行くんだ…)



─面倒な気持ちとは裏腹に、真希が行くって言った事に安心してる私がいた─。



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