月の欠片

──かんぱぁい!!──


皆が一斉にグラスを上げる。


一次会の会場とは違い、皆との距離も近付いて

和やかな空気になった。



少しずつ酔いも回り始めたのか、

騒ぎ出す子達もいて、

皆がそれを煽りだす。




(やっぱ帰らなくて良かったかも。)




普段、話さないような子達も酒の力で陽気になって会話が弾む。



哲也と宮川洸太はビンゴ大会の準備に取り掛かりながら、


皆の対応に追われてた。




(結局、話せないまんまかぁ…)




私はグラスを空けるピッチを早めて、

自分のテンションを維持していた。




ビンゴ大会も終わって、幹事は集金に回っていた。



宮川洸太が私と真希の集金に来た時、

真希が、

『洸太、うちらから金取る気なの〜?』


と冗談ぽく絡む。




宮川洸太は一瞬、困ったような顔をして、

私の顔を見て、


『しょうがねぇな、特別だぞ!でも、他の奴らには内緒なっ!!』



って笑ってくれた。





(……っっ!!)





私に向けられた笑顔に、お礼を言うのも忘れて言葉を失った。




(…真希がいるから特別扱いしてくれるんだよね?)


自惚れないように、勘違いしないように、

自分自身に何でもないって言い聞かせていた。





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