月の欠片
4人ずつ3台のタクシーに分かれて、
宮川洸太の店まで走らせる。
すでに時間は午前零時近くになっていた。
(…はぁ、なんか疲れてきたなぁ)
私は、水商売という仕事もあって
周りの同い年の子たちよりは、お酒に強かった。
そのせいか、皆との温度差に少し疲れてしまっていた。
店に着くと、
皆が慣れた様子でくつろいでいた。
(こないだテツに連れて来てもらわなかったら、私だけ初めてだったんだなぁ…)
何だか寂しくなっていた。
それでも、また職業病で
皆のグラスに酒を注ぐ。
カウンターと1つテーブルがあるだけの、あまり広くない店内は、
少ない人数でいっぱいになる。
最後まで、宮川洸太は幹事として働いていた。
ただ職業病で勝手に動いてしまうだけなのに、
『相澤さんって、こんなに気配りする人だったんだね。』
なんて言う真希の友人がいて、
少し気が良くなった。
チラっと真希を見ると、もう仲良しの男の子に挟まれて
楽しそうに会話してる。
(いいなぁ〜あんな風に自然でいられて…)
そんな真希が羨ましかった。
哲也と宮川洸太を目当てに来てた女の子たちは、
構ってもらえないからか、いつの間にか帰って行った。
1つのテーブルを囲んで、残るは
真希と、哲也と、宮川洸太、数人の男の子…
そして私だけになっていた。