月の欠片
誕生日
─その日の夜は眠れなかった─
眠い目を擦りながら大きなあくびをする。
(あ〜ぁ、顔むくんじゃったよ…)
鏡を見ながら、溜め息をつく。
哲也達が店を出てから、
宮川洸太の誕生日について色々考え込んでいた。
何を着ていこう、とか
店が早く終わらなかったらどうしよう、とか
シャンパンは何を飲んだら喜ぶかな、とか
一人で行って大丈夫かな、とか…
考えれば考えるほど、眠れなくなって
それより、胸のドキドキが押さえられなくて、
店に来てくれた事が嬉しくなって、
眠ろうと目を閉じる度に、宮川洸太の顔が浮かんで離れなかった。
(なんでこんなドキドキしてんだろ?)
腫れぼったい顔にメークをして、
気合いを入れて両手でピシャっと顔を叩いた。