月の欠片
最後のお客さんが帰ると同時くらいに店を出て

タクシーに飛び乗った。


─プルルルル─

哲也に電話する。

─哲也は今日、仕事を休んで宮川洸太の店の手伝いをしていた。


(忙しいのかな…)



『もしも〜し?梨花ぁ?仕事終わったか〜?』


電話の向こうは騒がしいくらいに賑やかだった。




『今仕事終わってタクシー乗ったよぉ!…店?うん、わかるよぉ。…あと10分くらいで着くから。』





タクシーの中で深呼吸して、

鏡で化粧が崩れてないかチェックする。



初めて一人で行くって事もあって、

私の心臓は、かなりドキドキドキドキしていた。




(あ〜もうすぐ着いちゃうよ、どうしよ〜!)



─アッと言う間に店の前まで来てしまった。


(よしっ!!!)



大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出して、


階段を登っていく。



カン、カン、カーンと一段ずつヒールが当たって音が響く。



私はドアに手をかけて、一息ついてから

勢いよくドアを開けた─





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