月の欠片
─いらっしゃいませ〜─
二人の元気な声がする。
店内はお客さんで埋めつくされていた。
カウンターの端っこに空席を見付ける。
(あっ同窓会の時に座ってた席だぁ…)
『梨花ぁ〜待ってたぜぇ〜!!』
酔った哲也が甘えた口調で話しかける。
(えぇ〜テツに会いに来たんじゃないのに…
不満気な顔でチラっと横目で宮川洸太を見つめる。
(あっ目が合っちゃった…)
─ドクンって心臓が跳ねる─
慌てて目をそらして哲也と話す。
『ねぇテツ、あっちお願い。』
小声で哲也にそう言って、宮川洸太が私の前に来る。
(気持ちが伝わっちゃったかな…)
思わずクスっと笑ってしまう。
『相澤さん、本当に来てくれたんだ〜ありがとう〜』
宮川洸太が嬉しそうに笑った。
私もつられて笑顔になる。
『お誕生日おめでとぉ』
『うん、ありがと!!』
顔を見合わせて、二人でまた笑った。